側弯症手術と保存治療
手術療法について
今回は側弯症の手術療法について当院の考えと療法についてお話します。
まず前提として当院は「側弯症手術に絶対に反対」というわけではありません。
なぜか。
大きく2つの理由があります。
①どうしても手術しなければならない。
②先天性側弯症である。
この2つは手術を療法がベストな選択と言えるでしょう。
逆にいうとこれら以外であれば手術療法を選択する前に、あらゆる保存療法での改善の可能性があるということです。
なぜ先程の2つは手術療法がベストなのか
①の方から説明します。
これに当てはまる方の例を挙げると、
⑴度数が100度を超えている方
⑵学生時代は進行せず改善したものの、成人になってから急激に進行してしまった方
どちらも側弯症全体でみると少数ではありますが稀にいらっしゃいます。
⑴の場合、度数が高すぎて改善までもっていくのが困難である。
もちろん「維持」は可能です。
実際に当院でも100度を超えて来院された方で、中学生の間は手術させたくないと親御さんのご希望に沿い悪化させない施術を行った実例があります。
ですが、手術適応ライン(40度以下)への大幅な改善はやはり難しかったため、手術を勧めました。
⑵の場合は、そもそも一般的に成人すると側弯症の進行はあまりしない(急激な進行はなく、1年で1度程度進む可能性はある)とされていますが、残念なことに成人を迎えてから急激に進行してしまうケースがまれにあります。
これは誰にも予測できないことで、先程の一般的な概念に加え、身体がある程度出来上がっている状態での急激な進行のため装具も年齢的に対象外で抑えつけるのが難しいとされています。(そうならないため当院では成人後もアフターケアを推奨しています)
②の先天性側弯症は生まれつき背骨が弯曲している状態であるため、40度以下であれば特発性側弯症と同様に様子をみて装具や運動療法などで対応していきますが、度数が高度になると「背骨をもとの位置に戻す」ということが大変難しいとされています。
なので手術推奨となります。
側弯症の手術療法に伴う危険性
側弯症の手術療法に適している時期は10代なかごろから後半にかけてと言われています。
しかし骨の成長のピークが過ぎたからといって、まだ成長の余地が残されている子どもの背骨を手術することは個人的には疑問に思います。
側弯症の手術療法は身体の前側もしくは横側から身体を大きく切開し、背骨に金属棒(主にチタン合金)を連結して、曲がった背骨を矯正していきます。
背骨は小さな椎骨が連なって構成されています。
その椎骨に金属製のフックやねじ釘を食い込ませて金属をそこに連結させて固定します。
術後のレントゲンをみると椎骨に食い込んだフックやねじ釘、背骨に沿って走る金属棒がその存在を際立たせるかのようにハッキリと写っています。
それを見ると現代の整形外科の技術に驚かされます。
しかし自分の身体や自分の子どもの身体に入れるとなると・・・
また背骨は神経の束が通っている重要な部位だけに、そこを手術することには危険性も伴います。
まず手術時間は長く、自分の血を3回にわけて貯血し、入院期間も1か月程度と長く、神経の麻痺や術後感染症などの合併症が生じる可能性も残念ながらあるようです。
背中に20~40センチの手術痕が残り、場合によっては痛み止めを服用し続ける必要があり、部活等の激しい運動は1年ほど(体育は3~6か月)控える必要があります。
もっと心配なのは、日常生活で起こる現象として固定する力が強いがために、落とした者を拾うのに苦労したり、トイレで用を足した後に自分で処理できないなどがあります。
また幼い時期に手術をする場合は、金属棒で連結する手術の他に「ベプター」と呼ばれる棒状の器具を取り付ける方法や「グローインカット」があります。
この場合だと成長期が終わるまでに調整のために何度も手術を行う必要があります。
側弯症は年齢が低いほうが保存療法で改善する可能性が高く、加えて度数も大幅に改善しやすいです。
当院には2歳で60度だった男の子が5歳では10度未満に改善した例もあります!(詳しくはインスタグラムをご覧ください)
手術による矯正と自然な矯正の違い
手術による矯正とは、先程述べたように金属によって固定することによって生じる不自然な矯正です。
背骨は多数の関節によって柔軟性を保っています。
その背骨が金属で押さええつけられますと、背骨の動きが制限されることは避けられません。
つまり、手術をうけた部位の背骨は動かなくなってしまうのです。
もちろん骨の成長の阻害され、運動能力の低下を示すともいわれています。
一方、当院が行っているような自然な矯正は、側弯エクササイズで全身の筋肉が矯正され、筋肉の働きを使った施術と装具によって思う存分身体を動かすことができ、運動能力は以前よりも高くなることがあります。
背骨も自由に動かすことができるので、側弯症による痛みの感じない思春期の方や筋肉が硬まってしまい姿勢が曲がったまま固定されているような高齢の方には生活のストレスを感じることが少ないです。
側弯症は手術でしか改善しないとされている・・・
日本の側弯症改善において手術が絶対的というのは疑いの余地もありません。
ですが「手術しかない」というのは大きな誤りではないでしょうか。
ドイツなどのヨーロッパでは「側弯症は個性」とされていて手術よりも保存療法を推奨しているようです。
特に思春期では保存療法を選択することで普通の学校生活を送ることができたり、見た目がきれいになるなどポジティブなことが多いはずです。
もちろん冒頭で述べた通り手術を全否定しているわけではなく、あくまでも選択肢として保存療法があって、最終手段として手術をあるという形が良いのではないでしょうか。