側湾症と後湾症
側弯症と後弯症
側湾症の方で特に高齢になると多いのが後湾症との合併です。
一般的に側彎症だけであれば、背骨が左右に湾曲することにより見た目でいう横の傾きがでてきますが、後湾症も加わると横+後ろつまり斜め後ろに傾いてしまいます。
また側彎症でなくとも高齢の方には後湾症を持っていて姿勢がまっすぐにならず、呼吸がしにくくなったり逆流性食道炎になりご飯を食べる量が減少し瘦せてしまう方もいらっしゃいます。
当院では側弯症の方をメインに施術をさせていただいていますが、後湾症の方も時折いらっしゃいます。今回は後湾症について深掘りしていきたいと思います。
脊柱後弯症とは
背骨が横から見たときに通常より大きく後ろへ丸くなった状態のことを指します。
いわゆる「猫背」がより強くなり、姿勢として固定してしまったような状態です。
本来、背骨はゆるやかなS字カーブ(側弯のs字カーブではなく横から見た時の生理的カーブのことです)で身体を支えていますが、このカーブが強まりすぎると、見た目の変化だけでなく、首や肩のこり、腰痛、疲れやすさ、呼吸の浅さなどの不調が現れます。
原因は大きく3つあります。
ひとつは、長時間(何十年と同じ姿勢での仕事など)の悪い姿勢や筋力低下による「姿勢性後弯」です。
デスクワークやスマホ操作で下を向き続けると、背中の筋肉が伸びきったまま固まり、胸の筋肉が縮んで背中が丸くなります。
二つ目は、成長期の背骨の形が影響する「構造的後弯」で、思春期に椎体が前側に潰れるように変形してしまうケース(シェーマン病)です。
三つ目は加齢によるもので、背骨や筋力が弱くなり、自然と背中が丸くなるタイプです。
日常生活での症状としては、背中が丸く見えるだけでなく、長時間同じ姿勢でいると疲れやすい、呼吸が浅い、肩こり・首こり・腰痛が続くといったものがよくみられます。
強い後弯になると、視線が下がり歩きにくくなることもあります。
カウンセリングには、姿勢の観察や触診、必要に応じてレントゲンで背骨の角度を測定します。
施術は原因によって異なりますが、多くの場合、ストレッチや筋力トレーニング、姿勢改善が効果的です。
成長期で角度が強い場合は、コルセットなどの装具施術を行うこともあります。
また高齢になると、背中の筋力低下や骨の変化が強くなり背中が丸まりやすくなります。
特に家事をずっとやられてきた方などは台所仕事などが負担になったりします。
これも脊柱後弯の一種で、長時間歩きにくくなる、背中が張って痛くなる、呼吸が浅いと感じる、視線が下がるなどの症状が出ます。
しかし、無理のない範囲でのストレッチや軽い体操、散歩などを習慣化すれば、多くの方に改善が見られます。
特に、胸を開くストレッチや肩回しは効果的で、日常生活の中でも無理なく続けられる方法です。
姿勢も少し意識するだけで変わります。
椅子に深く座る、下を向きすぎない、といった小さな工夫が積み重なれば、背中の丸まりは徐々に軽くなります。
反り腰との違い
反り腰と比較してみると、
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- 腰が過度に反って前にカーブする
- お腹が前に突き出して見える
- ヒップが後ろに出て見える
- 骨盤が前に傾く(前傾)→ 太ももの前・腰の筋肉が硬く、腹筋やお尻が弱い
骨盤の前傾(反り腰姿勢の大本)
- 腹筋・お尻の筋力不足
- 腸腰筋・太ももの前(大腿四頭筋)が硬い
- ハイヒール・つま先重心の習慣
- 出産後の骨盤変化
- 腰の下部(腰椎)の痛み
- 太ももの前が張る
- お腹が突き出て見え、下腹が出やすい
- 仰向けになると腰が浮く
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胸のストレッチ
- 肩甲骨まわし
- 背中・体幹を鍛える(僧帽筋、菱形筋、脊柱起立筋)
腸腰筋・太ももの前を伸ばすことが重要である。一方で後湾症は・・・
・胸の部分(胸椎)が大きく丸くなる
- 頭が前に出る
- 肩が内側に入る(巻き肩)
- 猫背の強い状態
- 上半身が前に倒れやすい→ 背中側の筋肉が伸びて弱く、胸側が固い
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長時間の猫背姿勢(スマホ・PC)
- 胸や肩の筋肉の固さ
- 背中の筋力低下
- 成長期の背骨の変形(シェーマン病)
- 加齢による変化
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背中のハリ・痛み
- 肩こり、首こり
- 呼吸が浅い
- 腰痛(丸まりすぎの痛み)
- 姿勢が前に崩れて疲れやすい
アプローチがまったく逆だから正しく見分けることが重要であると言われています。
後弯と反り腰の組み合わせも多い
後弯(背中が丸い)と反り腰(腰が反りすぎ)の組み合わせは、実はとても多く、特に デスクワーカー・スマホ時間が長い人・運動不足の人 によく見られます。
この組み合わせは、背骨が前に倒れすぎた上半身を、腰が強制的に反って支えてしまっている状態です。
ではなぜこのようになるのか。スマホ・PC姿勢で頭が前になり肩が内巻き(巻き肩)胸の筋肉(大胸筋)が硬くなり、背中の筋肉(僧帽筋・菱形筋)が弱くなる。結果として胸椎のカーブが増えて、上半身が“前に倒れる。
そして上半身が前に倒れると、人間の身体はまっすぐ立つために 腰を反らせて後ろへ重心を戻そうとする。
よって反り腰が後弯の代償として発生する。
後弯がある限り、反り腰がよくならない構造 になっていて、反り腰だけストレッチしても再発する理由はこれです。
反り腰をよくしようとしても 一時的に良くなっても、背中が丸いままなのでまた腰が反ってバランスを取ろうとする。
そのため背中の丸まりを先に改善することを優先しましょう。
上半身がまっすぐ起きることで 腰が反ってバランスを取る必要がなくなり、自然に反り腰も改善するということです。
後湾症と反り腰の改善ステップ
①胸と肩のストレッチ・・胸を開くストレッチや片手壁ストレッチや大胸筋のストレッチ
②背中の筋肉を動かす・・肩甲骨寄せ運動やバンザイで肩甲骨下制
③骨盤前傾をただす・・腰を反らす根本の太ももの前ストレッチや腸腰筋ストレッチ
④腹筋・お尻の強化・・ドローイン(腹圧)やブリッジやプランクなど
この順番はかなり重要で、後弯(背中の丸まり) → 骨盤前傾(反り腰) → 体幹安定
という流れで整える合理的なルートになっています。
高齢者の後湾症
年を重ねると「腰が曲がってきた」「背中が丸くなってきた」という方が増えます。
これは特別な病気ではなく、加齢・生活習慣・筋力の低下 が重なって起こる自然な変化です。
ただし、早めに気づくことで進行をゆっくりにしたり、痛みを減らすことができます。
ここでは、腰が曲がる主な原因と、家でできる簡単なチェック方法をまとめました。
まず、最も多い原因は 背骨の圧迫骨折です。
骨が弱くなる骨粗しょう症があると、背骨が知らないうちにつぶれ、背中が丸くなってしまいます。
痛みが弱く気づかないことも多いため、「いつの間にか背中が丸くなる」人が少なくありません。
次に多いのが 筋力の低下 です。
姿勢を支える背中やお腹の筋肉が弱くなると、身体をまっすぐ保ちにくくなり、自然と前かがみになります。
特に長い時間座っている人や運動習慣がない人は、背すじを伸ばしにくくなります。
さらに、骨や関節や筋肉の硬さも原因のひとつです。
胸や背中、股関節が硬くなると背筋が伸びず、歩くときも前に倒れた姿勢になりやすくなります。
息が浅くなる、歩幅が小さくなる、といった変化も起こります。
最後に、長年の習慣 も大きな影響があります。
重労働や家事や農作業など前かがみの姿勢が多かった方は、年齢とともにその姿勢が固定されていきます。
家でできるチェックリスト
- 壁に背をつけても、後頭部が壁につかない
- 立つと肩が腰より前に出て見える
- 歩くとき、頭が前に突き出ている
- 靴のかかとの外側だけが減る
- バンザイが最後まで上がらない
- 背中・腰が伸びにくい
- 椅子に座るとすぐ猫背になる
- 身長が5cm以上縮んだ
- 背中や腰が疲れやすい
- 足元ばかり見るクセがある
- 転びやすくなった
- 片足立ちが3秒以下
- 呼吸が浅い
4つ以上当てはまる場合、背中の丸まりが進んでいる可能性があります。
ストレッチやトレーニングに加え施術など外部からの刺激を加えて、自分の身体に正しい姿勢を覚えさせることも大切です。

