側湾症とキャビンアテンダント
側弯症とキャビンアテンダント
側湾症と職業
側湾症は病気に近いものととらえていただくのが最も適していますが、最も進行しやすい思春期、筋力の低下により自分で自分の姿勢を保持できなくなる高齢期を除けば、重度でない限り「ただ背骨が曲がっている」にすぎません。
つまり社会的に何かマイナスになることは特段ないことが多いです。
しかし唯一といっていいほどシビアなのが航空業界への就職です。
当院の患者さんのなかには人前に出る仕事であるモデル・俳優・アイドル・ダンサーなどもいらっしゃいますが、いちいちレントゲンを撮影するわけではないので、日々のケアを怠らずにしっかりとすれば、見た目では気づかれないくらいになります。
一方、国内の航空業界では入社試験の最終試験の際に厳格な身体検査が行われレントゲン撮影があります。
コロナ前は毎年のように受験者で側湾症改善を希望される方がいました。
コロナで採用がなくなり慌てて来院される方は少なくなりましたが、最近また採用がスタートしたようで希望者が多く施術を受けにいらしています。
そんななかで、前回のコラムにも載せたように、中途採用ではありますが今年も合格者が出ました。
その方に身体検査について、どういった感じなのかを聞いたので、来年以降受験をされる方は参考にしていただければと思います。
(ちなみに最終試験でのみ身体検査が行われるようので、そこまで残らなければなりません・・・新卒採用であれば4~5次試験まで、中途採用であれば2~3次試験まであるようですね)
キャビンアテンダントの合格基準
前提としてパイロットは関係ないのかという話ですが、もちろん身体検査がある以上レントゲンを撮影して側湾症と診断されれば減点対象になりますが、そもそも側湾症は女性に多くパイロット志望の方よりもキャビンアテンダント志望の方が多いので、今回はキャビンアテンダントについて記していきます。
まず①国内の航空会社か外資系企業なのか
②国内大手航空会社なのか国内小規模航空会社なのかによって基準が全然違います。
合格のしやすさでいうと国内小規模>>外資系>>>>国内大手ぐらいかと思います。
もちろんここには英語力や学力も関係ありますが、外資系であれば20度~30度くらいであればチャンスありとみて問題ないでしょう。
また国内路線のみの小規模会社であれば40度程度でもチャンスがあるはずです。
当院の度数の高い患者さんでも外資系・国内小規模も合格者が出ているので、おそらく間違いないでしょう。
一方、多くのみなさんが目標としている国内大手の2社に関しては、他にどれほど秀でている才能や経験値があっても、レントゲンを撮影した段階で目に見えて彎曲していたら合格できません。
では、どれくらいが合格基準なのか。
公式に発表されているわけではありませんし、毎年受験者数が違ったりするので、絶対ではありませんが「おおよそ15度くらい」が合格基準ではないでしょうか。
根拠としては、①(度数の測り方は担当医によって違いますが)15度くらいであれば側湾症でない人と見比べてもそこまで違和感を感じないという点
②当院で新卒採用された方が21度から半年程度で13度まで改善されて試験に通ったという点にあります。
JAL(日本航空)かANA(全日空)か
では大手航空会社の2社ではどちらが厳しいのか。
受験者の話をきくと、現状の試験方法であればJALさんのほうが基準が厳しいようです。
レントゲンが全てといったような感じで少しでも彎曲があると落とされてしまうようです。
一方、ANAさんはレントゲン撮影の前に触診があります。
その際に違和感がなければレントゲンが1枚で済むようです。
しかし触診で背中のでっぱりがあると複数枚レントゲンをとられて合格の可能性が無くなるようです。
なので触診の時点で違和感がないようにすれば合格に近づくといえます。
当院の患者さんもどちらにも合格された方もいらっしゃいますが、JALさん不合格ANAさん合格というパターンも多いです。
なので背骨に自信のない方はANAさんおすすめです。(今後、試験方法が変わる可能性も大いにあり得ますが)
合格に向けて
では合格に向けてどうすればよいのか。
結論としては「試験までに改善する」ですが、まず現状把握のために近くの整形外科でレントゲンを撮りましょう。
小学生や中学生や高校生の時に行われるモアレ検査は、軽度の場合指摘されないことがほとんどです。
成長期に進行しなければ、曲がっていることに気づかず試験会場に行くことになります。
また過去に指摘されても医師に軽度だから経過観察と診断された場合でも少しは進行している可能性もあります。
なのでまずは現状把握が必要となるでしょう。
そこで彎曲が気にならない程度であれば問題ありません。
少しでも彎曲しているのであれば早急に改善が必要です。
おそらくキャビンアテンダントになろうとする時期は大学3・4年生や社会人の方だと思います。
他のコラムに書いてありますが、成長期を終えている方がほどんどになるので、思春期側湾症を改善するよりも時間がかかることが多いです。
見た目の改善であれば年齢は関係ありませんが、度数の改善になるとより難易度があがります。
15度を目指すのであれば、度数が20度前後であれば5度改善するだけですので可能性はあります。
しかし40度であれば25度改善しなければいけません。
試験直前に気づいて数か月でどうにかできるほど甘くはないからです。
また側湾症の施術の1つでもあるコルセットは、医師の許可が下りなければ保険適用で造れません。
ほとんどの医師は成長期が終わった方へはコルセット制作の許可を出さないです。
なぜならコルセットの目的は思春期の方が改善するためではなく悪化しないためがメインなので、コルセットにはあまり期待できません。
では手術をしてまっすぐにすればいいのではと思う方もいらっしゃると思います。
残念ながら手術している人はどこの企業もキャビンアテンダントとしては採用してくれないようです。
脊柱に金属が入るので勤務に支障をきたす可能性を考慮してとのことだと思います。
またレントゲンにも金属がくっきりと写ってしまうため誤魔化しはきかないでしょう。
なので、気づいたらすぐに何かしらの施術を始めましょう。
そのほかの職業であれば・・・
冒頭でも書いた通りパイロット・キャビンアテンダント以外の職業であれば、なれないということは基本的にはありません。
レントゲンを撮影して審査することなんてないため、見た目を改善して維持していけば人前にでる仕事も夢ではありません。
当院にもミラノなどのヨーロッパでもモデル活動している方もいますし、アイドルとしてテレビに毎日出ている方もいたり、プロの演奏家として大きな会場でコンサートをされている方や、南米でタンゴのダンサーしていたりなどなど側湾症を持ちながらも様々な業界で世界を舞台に活動されている方もいらっしゃいます。
側湾症というのは病気に近いです。
なので予防法は今のところ無いですし、どこまで悪くなるのかもわからない、思春期側湾症が多いとはいえ1歳や2歳の赤ちゃんで側湾症になる子もいたりします。
今回はたまたま先月キャビンアテンダントに合格された患者さんがいたのでキャビンアテンダントについて深堀してお話してきましたが、どんな職業に就こうが湾曲を改善するに越したことはありません。
また年齢を重ねれば痛みが出てきたり、傾きがひどくなってしまうこともありますから・・・